英語

『英語の帝国』について  平田雅博著 

投稿日:2017年11月4日 更新日:

( 51年生まれ。青山学院大学教授(ブリテン近現代史) 講談社 1700円 )

寺島先生(元岐阜大学教授)のブログに目を通していると「英語の帝国」に目がとまりました。けれども私がもっと引きつけられた言葉は

他言語駆逐 植民地化の道たどる

 という題名よりもっと大きな文字で書かれている 上記の文字でした。それで本を買って読んでみました。なぜ、どのようにして「英語が世界の共通語」になったのかということがよくわかりました。とても面白くて読みやすかったので読んでみてください。

寺島先生の書評を紹介します。

教育戦争や暴力によって獲得された「大英帝国」は、形として目にもつきやすいし分かりやすい。しかし、この裏には形とし目につきにくい「帝国」、すなわち「英語の帝国」の拡大があった。 

 ブリテン諸島の一部にすぎなかったイングランドの言語が、周りのウェールズ、スコットランド、アイルランドの言語を駆逐させただけでなく、今では「世界の共通語」と称されるまでになった。

 本書は、その経緯を詳細に跡づけたものである。そのなかで特に注目すべきなのは、大英帝国が旧植民地を「イングランド語の帝国」にするにあたって画期点となったマケレレ会議の紹介であろう。

 というのは、1961年にウガンダのマケレレで開かれたブリテン連邦会議で、次のような「信条」が確認され、イングランド語を「英語の帝国」として拡大していく際の原則とみなされるようになったからである。

 「英語は英語で教えるのがもっともよい」

 「理想的な英語教師は英語を母語とする話者である」

 「英語学習の開始は早いにこしたことはない」

 これらがいかに間違っているかは、ロバート・フィリプソン『言語帝国主義ー英語支配と英語教育』によって論証されているのであるが、不幸なことに、旧植民地を大英帝国の属国として維持するためにまとめられた諸原則が、いま日本で小学校から大学にいたるまで大手を振ってまかりとおっているのである。私が本書をお勧めするゆえんである。第4章や終章の、ガンジー、小田実、本田勝一の英語論にもぜひ注目いただきたい。

 

さらに寺島先生は書評の続きを、次のようにブログに書かれています。

 不幸なことに、旧植民地を大英帝国の属国として維持するためにまとめられた諸原則が、いま日本で小学校から大学にいたるまで大手を振ってまかりとおっているのである。

 では「残りの二つ」とはどんな内容だったのでしょうか。『英語の帝国』(200頁)によれば、それは次のような二項目でした。
「英語に接する時間は長いにこしたことはない」
「英語以外の言語の使用は英語の水準を低下させる」

 これもまた、いま文科省が導入しようしている英語教育政策そのものです。「英語に接する時間は長いにこしたことはない」という間違った論拠に従って、来年度から小学校英語は三年生から導入され、五年生からは「教科化」されるからです。
 このような風潮が続けば、あと数年もしないうちに「三年生から導入してもあまり教育効果が見られないから一年生から導入すべきだ」という声が強くなることは目に見えています。

 あまり教育効果が見られないのは、導入時期の問題ではなく、小学校英語というのは、その性格上、私の言う「ザルみず効果」に終わるしかないからです。
 拙著『英語教育原論』第三章「小学校の英語教育を再考する」で詳述したように、日常的に使う場のない日本では、丸暗記を強要された単語や言い回しは、「ザルに水を入れる」のと同じく、脳に溜まっていかないからです。

 しかも英語を丸暗記するのに浪費された膨大な時間は、小学校における他教科の時間を削減させることにつながり、必然的にノーベル賞を生み出した基礎学力、国語力や数学力といった基礎学力を低下させることにつながるでしょう。
 また、「英語以外の言語の使用は英語の水準を低下させる」という原則をひとつの口実として、大学では第二外国語の学習は必修から外されてしまいました。実際、私が定年まで勤務していた大学では、主として工学部から「教養科目でドイツ語や中国語をやる必要はない。英語だけ使えるようにしてくれればよい」という強い声がありました。

 こうして、それに代わって登場したのが文科省の「専門科目や大学院までも英語で教えろ」という政策でした。そして、このような方向で「国際化」をはかる大学に巨額の補助金を出すという、間違った「国際化=アメリカ化」が、いま強力に推進されているのです。
 そして他方で、全国の国立大学への交付金は毎年のように削減され、今では非常勤や期限付きの教員が全教員の過半数を占める勢いになってきています。
 これで、どうして腰を落ち着けて研究や教育に専念できるでしょうか。若手研究者は次の就職先を探すために多大な精力を割かねばならなくなるのですから。

 こうしていま日本では、「マケレレ会議の原則」「旧植民地を大英帝国の属国として維持するためにまとめられた諸原則」が、小学校から大学にいたるまで、大手を振ってまかりとおっているのです。

 

 

 

 

 

 

 

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